今度の昇進はよっぽど道綱も嬉しいと見え、いそいそとして其処此処御礼まわりなどに歩いていたが、その寮(右馬寮)の長官が丁度道綱には叔父にあたる御方なので、其処へも或日お伺いすると、まだお若いその御方は非常に歓ばれて、よもやまな物語の末、何処からお聞きになって知っていらしったのか、私の手許に養っている撫子の事を何くれとなくお問いになり、「御いくつになられました?
などと熱心に訊かれたそうだった。
帰って来てから、道綱が私にその事を話して聞かせたが、私は「まあ、いくらお好色な方だって、こんな撫子を御覧になったら――」と答えたぎり、なんとも気にはとめなかった。