少女はふいと前の月夜の事を思い出し、その顔へ自分の袖をかけてやりながら、いま一人の穉児をひしと抱き締めて、其処にいつまでも顔を伏せていた。
新しい普請の出来上った三条の屋形では、古い池と共に焼け残った藤が、今年はどういうものか、例年になく見事な花をつけた。
それが一層屋形の人けの絶えたのを目立たせているような単調な日々の中で、少女は又昔のとおりに、物語を見ては、夢みがちに暮らしていた。
少女はふいと前の月夜の事を思い出し、その顔へ自分の袖をかけてやりながら、いま一人の穉児をひしと抱き締めて、其処にいつまでも顔を伏せていた。
新しい普請の出来上った三条の屋形では、古い池と共に焼け残った藤が、今年はどういうものか、例年になく見事な花をつけた。
それが一層屋形の人けの絶えたのを目立たせているような単調な日々の中で、少女は又昔のとおりに、物語を見ては、夢みがちに暮らしていた。