「今頃お父う様はどこいらを旅なすっていらっしゃるだろう」と、穉い頃東から上ってきた遠い記憶を辿りながら、その佗びしい道すじの事を浮かべていると、父恋しさは一層まさるばかりだった。
朝がた、東の方の黒ずんだ森から、秋の渡り鳥らしいのが一群、急に思い出したように一しょに飛び立って、空を暗くしては山の彼方へ飛び去って往くのなんぞを、女は何がなしいつまでも見送っていた。
晩秋の一日、女は珍らしく思い立って、太秦へ父の無事を祈りに、ひとりで女車に乗って出掛けた。
「今頃お父う様はどこいらを旅なすっていらっしゃるだろう」と、穉い頃東から上ってきた遠い記憶を辿りながら、その佗びしい道すじの事を浮かべていると、父恋しさは一層まさるばかりだった。
朝がた、東の方の黒ずんだ森から、秋の渡り鳥らしいのが一群、急に思い出したように一しょに飛び立って、空を暗くしては山の彼方へ飛び去って往くのなんぞを、女は何がなしいつまでも見送っていた。
晩秋の一日、女は珍らしく思い立って、太秦へ父の無事を祈りに、ひとりで女車に乗って出掛けた。