ようやく任も果てたので、その明けがた京へ上ろうかと思って、お暇乞に参上いたしますと、ただでさえいつも神々しいような御所でしたが、その折は又円融院の御世からお仕えしているとか云う、いかにも神さびた老女が居合わせて、昔の事などなつかしそうに物語り出し、しまいにはよく調べた琵琶までも聞かせてくれました。
私もまだ若い身空でしたが、何んだかこうすっかりその琵琶の音が心に沁み入って、ほんとうに夜の明けるのも惜しまれた位でした。
――それからというもの、私はそんな冬の夜の、雪なんぞの降っている晩には極まってその夜の事を思い出し、火桶などかかえながらでも、かならず端近くに出ては雪をながめて居ったものでした。