或晩秋の日、女は夫に従って、さすがに父母に心を残して目に涙を溜めながら、京を離れて往った。
穉い頃多くの夢を小さい胸に抱いて東から上って来たことのある逢坂の山を、女は二十年後に再び越えて往った。
「私の生涯はそれでも決して空しくはなかった――」女はそんな具合に目を赫やかせながら、ときどき京の方を振り向いていた。
或晩秋の日、女は夫に従って、さすがに父母に心を残して目に涙を溜めながら、京を離れて往った。
穉い頃多くの夢を小さい胸に抱いて東から上って来たことのある逢坂の山を、女は二十年後に再び越えて往った。
「私の生涯はそれでも決して空しくはなかった――」女はそんな具合に目を赫やかせながら、ときどき京の方を振り向いていた。