何しろお父様が初めてその村においでになったのは随分昔のことらしく、それでお父様はよく同じ浅間山の麓にある外人の宣教師たちが部落しているK村にお出かけになっていたようであるが、或る年の夏、丁度お父様の御滞在中に、山つなみが起って、K村一帯がすっかり浸水してしまった。
その折、お父様はK村に避暑していた外人の宣教師やなんかと共に、其処から二里ばかり離れたO村まで避難なさったのだった。
……その折、昔の繁昌にひきかえ、今はすっかり寂れ、それがいかにも落着いた、いい感じになっているこの小さな村にしばらく滞在し、そしてこの村からは遠近の山の眺望が実によいことをお知りになると、それから急にお病みつきになられたのだ。