が、一方では、ああやって何事もなかったようにお逢いし、そうして何事もなかったようにお分れしたのもかえって好いことだったかも知れない、――そう、自分自身に云って聞かせながら、いくぶん自分に安心を強いるような気もちでいた。
そうしてその一方、私は、自分たちの運命にも関するような何物かが――今日でなければ、明日にもその正体がはっきりとなりそうな、しかしそうなることが私たちの運命を好くさせるか、悪くさせるかそれすら分らないような何物かが――一滴の雨をも落さずに村の上を過ぎってゆく暗い雲のように、自分たちの上を通り過ぎていってしまうようにと希っていた。
或る晩のことであった。