私はもうみんなが寝静まったあとも、何んだか胸苦しくて眠れそうもなかったので一人でこっそり戸外に出て行った。
そうして、しばらく真っ暗な林の中を一人で歩いているうちに漸く心もちが好くなって来たので、家の方へ戻って来ると、さっき出がけにみんな消して来た筈の広間の電気が、いつの間にか一つだけ点いているのに気がついた。
お前はもう寝てしまったとばかり思っていたので、誰だろうと思いながら、楡の木の下にちょっと立ち止まったまま見ていると、いつも私のすわりつけている窓ぎわで、私がよくそうしているように窓硝子に自分の額を押しつけながら、菜穂子がじっと空を見つめているらしいのが認められた。