お前はもう寝てしまったとばかり思っていたので、誰だろうと思いながら、楡の木の下にちょっと立ち止まったまま見ていると、いつも私のすわりつけている窓ぎわで、私がよくそうしているように窓硝子に自分の額を押しつけながら、菜穂子がじっと空を見つめているらしいのが認められた。
お前の顔は殆ど逆光線になっているので、どんな表情をしているのか全然分からなかったが、楡の木の下に立っている私にも、お前はまだ少しも気づいていないらしかった。
――そういうお前の物思わしげな姿はなんだかそんなときの私にそっくりのような気がされた。