九月になって、その学生たちが引き上げてしまうと、例年のように霖雨が来て、こんどはもう出ようにも出られなかった。
爺やたちも私があんまり所在なさそうにしているので陰では心配しているらしかったが、私自身にはそうやって病後の人のように暮らしているのが一番好かった。
私はときどき爺やの留守などに、お前の部屋にはいって、お前が何気なくそこに置いていった本だとか、そこの窓から眺められるかぎりの雑木の一本一本の枝ぶりなどを見ながら、お前がその夏この部屋でどういう考えをもって暮らしていたかを、それ等のものから読みとろうとしたりしながら、何か切ないもので一ぱいになって、知らず識らずの裡に其処で長い時間を過ごしていることがあった。