私は矢っ張何かほっとし、朝夕、あちこちの林の中などへ散歩に行くことが多くなった。
余儀なく家にばかり閉じこもらされていたときはそんな静かな時間を自分に与えられたことを有難がっていたのだったけれど、こうして林の中を一人で歩きながら何もかも忘れ去ったような気分になっていると、こういう日々もなかなか好く、どうしてこの間まではあんなに陰気に暮らしていられたのだろうと我ながら不思議にさえ思われてくる位で、人間というものは随分勝手なものだと私は考えた。
私の好んで行った山よりの落葉松林は、ときおり林の切れ目から薄赤い穂を出した芒の向うに浅間の鮮な山肌をのぞかせながら、何処までも真直に続いていた。