が、私は傍らの椅子に腰かけたまま、その手帳を無雑作に手に丸めて持ちながら、一種苛ら立たしいような気持で、爺やが薪を焚きつけているのを見ている外はなかった。
爺やはそういう苛ら苛らしている私の方を一度も振りかえろうとはせずに、黙って薪を動かしていたが、この人の好い単純な老人には私はそんな瞬間にもふだんの物静かな奥様にしか見えていなかったろう。
……それからこの夏私の来るまで此処で一人で本ばかり読んで暮らしていたらしい菜穂子だって私にはあんなに手のつけようのない娘にしか思われないのに、この爺やには矢っ張私と同じような物静かな娘に見えていたのだったろう。