その記憶も漸く遠のいて私の心の裡でそれが全体としてはっきりと見え易いようになり出した、それから約一年後の今夜、その同じ山の家の同じ暖炉の前で、私はこうして一度は焼いてしまおうと決心しかけた此の手帳を再び自分の前にひらいて、こんどこそは私のしたことのすべてを贖うつもりで、自分の最後の日の近づいてくるのをひたすら待ちながら、こうして自分の無気力な気持に鞭うちつつその日頃の出来事をつとめて有りの儘に書きはじめているのだ。
お前は暖炉の傍らに腰かけたまま、そこに近づいていった私の方へは何か怒ったような大きい目ざしを向けたきり、何んとも云い出さなかった。
私も私で、まるできのうも私達がそうしていたように、押し黙ったまま、お前の隣りへ他の椅子をもっていって徐かに腰を下ろした。