明はそれからその二人とは反対の方向へ、なぜ自分だけがそっちへ向って歩いて行かなければならないのか急に分からなくなりでもしたかのように、全然気がすすまぬように歩いて行った。
こうして人込みの中を歩いているのが、突然何んの意味も無くなってしまったかのようだった。
毎晩、彼の勤めている建築事務所から真直に荻窪の下宿へ帰らずに、何時間もこう云う銀座の人込みの中で何と云う事もなしに過していたのが、今までは兎も角も一つの目的を持っていたのに、その目的がもう永久に彼から失われてしまったとでも云うかのようだった。