圭介はいつも勤め先からの帰り途、夕方、折鞄を抱えて坂を上って来て、わが家の椎の木が見え出すと、何かほっとしながら思わず足早になるのが常だった。
そして晩飯の後も、夕刊を膝の上に置いたまま、長火鉢を隔てて母や新妻を相手にしながら、何時間も暮し向きの話などをしつづけていた。
――菜穂子は結婚した当座は、そう云う張り合いのない位に静かな暮しにも格別不満らしいものを感じているような様子はなかった。
圭介はいつも勤め先からの帰り途、夕方、折鞄を抱えて坂を上って来て、わが家の椎の木が見え出すと、何かほっとしながら思わず足早になるのが常だった。
そして晩飯の後も、夕刊を膝の上に置いたまま、長火鉢を隔てて母や新妻を相手にしながら、何時間も暮し向きの話などをしつづけていた。
――菜穂子は結婚した当座は、そう云う張り合いのない位に静かな暮しにも格別不満らしいものを感じているような様子はなかった。