三月の或暮方、菜穂子は用事のため夫と一しょに銀座に出たとき、ふと雑沓の中で、幼馴染の都築明らしい、何かこう打ち沈んだ、その癖相変らず人懐しそうな、背の高い姿を見かけた。
向うでははじめから気がついていたようだが、こちらはそれが明である事を漸っと思い出したのは、もうすれちがって大ぶ立ってからの事だった。
ふり返って見たときは、もう明の背の高い姿は人波の中に消えていた。
三月の或暮方、菜穂子は用事のため夫と一しょに銀座に出たとき、ふと雑沓の中で、幼馴染の都築明らしい、何かこう打ち沈んだ、その癖相変らず人懐しそうな、背の高い姿を見かけた。
向うでははじめから気がついていたようだが、こちらはそれが明である事を漸っと思い出したのは、もうすれちがって大ぶ立ってからの事だった。
ふり返って見たときは、もう明の背の高い姿は人波の中に消えていた。