その場に居合わせた多くの村の子達にも誰がそんな悪戯をしたのか遂に分からなかった。
明はそう云う初枝の幼時の話などを聞きながら、ふとあの勝気そうなおようが何処かの物陰に一人で淋しそうにしている顔つきを心に描いたりした。
今でこそおようは自分の事はすっかり詮め切って、娘のためにすべてを犠牲にして生きているようだけれど、数年前明がまだ少年で此の村へ夏休みを送りに来ていた時分、そのおようがその年の春から彼女の家に勉強に来て冬になってもまだ帰ろうとしなかった或法科の学生と或噂が立ち、それが別荘の人達の話題にまで上った事のあるのを明はふと思い出したりして、そう云う迷いの一ときもおようにはあったと云う事が一層彼のうちのおようの絵姿を完全にさせるように思えたりした。