それほどまで自分の事を気づかって呉れると云うよりか、圭介をこんな病人の自分と二人きりにさせて置いて彼の心を自分から離れがたいものにさせてしまう事を何よりも怖れているがためのようだった。
菜穂子はその一方、そう云う事まで猜疑せずにはいられなくなっている自分を、今こうしてこんな山の療養所に一人きりでいなければならなくなった自分よりも、一層寂しいような気持で眺めていた。
此処こそは確かに自分には持って来いの避難所だ、と菜穂子は最初の日々、一人で夕飯をすませ、物静かにその日を終えようとしながら窓から山や森を眺めて、そう考えた。