療養所に著くと、丁度患者達の安静時間中らしく、玄関先には誰の姿も見えないので、圭介は濡れた靴をぬぎ、一人でスリッパアを突っかけて、構わず廊下へ上がり、ここいらだったろうと思った病棟に折れて行ったが、漸っと間違えに気がついて引き返して来た。
途中の、或病室の扉が半開きになっていた。
通りすがりに、何の気なしに中を覗いて見ると、つい鼻先きの寝台の上に、若い男の、薄い顎髭を生やした、蝋のような顔が仰向いているのがちらりと見えた。
療養所に著くと、丁度患者達の安静時間中らしく、玄関先には誰の姿も見えないので、圭介は濡れた靴をぬぎ、一人でスリッパアを突っかけて、構わず廊下へ上がり、ここいらだったろうと思った病棟に折れて行ったが、漸っと間違えに気がついて引き返して来た。
途中の、或病室の扉が半開きになっていた。
通りすがりに、何の気なしに中を覗いて見ると、つい鼻先きの寝台の上に、若い男の、薄い顎髭を生やした、蝋のような顔が仰向いているのがちらりと見えた。