彼女よりももっと痛めつけられている身体でもって、傷いた翼でもっともっと翔けようとしている鳥のように、自分の生を最後まで試みようとしている、以前の彼女だったら眉をひそめただけであったかも知れないような相手の明が、その再会の間、屡々彼女の現在の絶望に近い生き方以上に真摯であるように感ぜられながら、その感じをどうしても相手の目の前では相手にどころか自分自身にさえはっきり肯定しようとはしなかったのだった。
菜穂子は自分のそう云う一種の瞞著を、それから二三日してから、はじめて自分に白状した。
何故あんなに相手にすげなくして、旅の途中にわざわざ立寄って呉れたものを心からの言葉ひとつ掛けてやれずに帰らせてしまったのか、とその日の自分がいかにも大人気ないように思われたりした。