僕はひとりで金堂の石段にあがって、しばらくその吹き放しの円柱のかげを歩きまわっていた。
それからちょっとその扉の前に立って、このまえ来たときはじめて気がついたいくつかの美しい花文を夕暗のなかに捜して見た。
最初はただそこいらが数箇所、何かが剥げてでもしまった跡のような工合にしか見えないでいたが、じいっと見ているうちに、自分がこのまえに見たものをそこにいま思い出しているのに過ぎないのか、それともそれが本当に見え出してきたのか、どちらかよく分からない位の仄かさで、いくつかの花文がそこにぼおっと浮かび出していた。