最初はただそこいらが数箇所、何かが剥げてでもしまった跡のような工合にしか見えないでいたが、じいっと見ているうちに、自分がこのまえに見たものをそこにいま思い出しているのに過ぎないのか、それともそれが本当に見え出してきたのか、どちらかよく分からない位の仄かさで、いくつかの花文がそこにぼおっと浮かび出していた。
それだけでも僕はよかった。
何もしないで、いま、ここにこうしているだけでも、僕は大へん好い事をしているような気がした。
最初はただそこいらが数箇所、何かが剥げてでもしまった跡のような工合にしか見えないでいたが、じいっと見ているうちに、自分がこのまえに見たものをそこにいま思い出しているのに過ぎないのか、それともそれが本当に見え出してきたのか、どちらかよく分からない位の仄かさで、いくつかの花文がそこにぼおっと浮かび出していた。
それだけでも僕はよかった。
何もしないで、いま、ここにこうしているだけでも、僕は大へん好い事をしているような気がした。