戒壇院をとり囲んだ松林の中に、誰もいないのを見すますと、漸っと其処に落ちついて、僕は歩きながらいま読んできたクロオデルの戯曲のことを再び心に浮かべた。
そうしてこのカトリックの詩人には、ああいう無垢な処女を神へのいけにえにするために、ああも彼女を孤独にし、ああも完全に人間性から超絶せしめ、それまで彼女をとりまいていた平和な田園生活から引き離すことがどうあっても必然だったのであろうかと考えて見た。
そうしてこの戯曲の根本思想をなしているカトリック的なもの、ことにその結末における神への讃美のようなものが、この静かな松林の中で、僕にはだんだん何か異様なものにおもえて来てならなかった。