――やっとその古墳のそばを離れて、その草ふかい丘をずんずん下りてゆくと、すぐもう麦畑の向うに、橘寺のほうに往くらしい白い道がまぶしいほど日に赫きながら見え出しました。
僕たちはそれからしばらく黙りあって、その道を橘寺のほうへ歩いてゆきました。
そうやって君と一しょにはじめて見たその菖蒲池古墳、――そのときはなんだか荒んだ、古墳らしい印象を受けただけのように思っていましたが、だんだん月日が立って何かの折にそれを思い出したりしているうちに、そのいかにもさりげなさそうに一ぺん見たきりの古墳が、どういうものか、僕の心のうちにいつも一つの場所を占めているようになって来ました。