南佐久の村々の間をはじめの一時間ばかりは何事もなく千曲川に沿ってゆくだけだが、そのうち川辺の風景が少しずつ変ってきて、白楊や樺の木など多くなり、石を置いた板屋根の民家などが目立ちだした。
そうしてそれらの枯木だの、家だのの向うに、すっかり晴れ切った冬空のなかに、真白な八つが岳の姿がくっきりと見えるようになって来た。
そうやってまだ人家のおおい平原を横切りながら、ぐんぐんと雪のある山に近づいてゆく一種の云い知れない快感を満喫しながら、僕は時々、物陰などにまだ残っている雪の工合などへも目を配っていた。