「ふん、そうかな」ほんとうを云うと、僕はそんなことには何も苦情をいうつもりはなかった。
ただほんのちょっとだけでもいい、そういう妻の注意を窓のそとに向けさせて、自分と一しょになって、そこいらの山の端にまっしろな花を簇がらせている辛夷の木を一二本見つけて、旅のあわれを味ってみたかったのである。
そこで、僕はそういう妻の返事には一向とりあわずに、ただ、すこし声を低くして言った。
「ふん、そうかな」ほんとうを云うと、僕はそんなことには何も苦情をいうつもりはなかった。
ただほんのちょっとだけでもいい、そういう妻の注意を窓のそとに向けさせて、自分と一しょになって、そこいらの山の端にまっしろな花を簇がらせている辛夷の木を一二本見つけて、旅のあわれを味ってみたかったのである。
そこで、僕はそういう妻の返事には一向とりあわずに、ただ、すこし声を低くして言った。