……そのうち僕の橇が動きだして向うの橇とすれちがおうとするとき、突然、向うの馭者が何かはげしく自分の馬を叱したので、ひょいと例の穴からのぞいて見ると、道を避けようとして片がわの積雪のなかへ深くはいり込んでしまった橇を曳き出そうとして、一しょう懸命になっている馬は、ほとんど胸のあたりまで雪に埋っていた。
なんども前脚を雪のなかから引き抜こうとしてば、そこらじゅうに雪煙りをちらしていた。
僕もそのとばっちりを受けそうになって、いそいで顔をひっこめたが、向うの橇はすっぽりと幌を下ろしてはいるものの、空のようだった。