僕は目をつぶって、幌の穴から見ようとすれば見えたでもあろう、そのような雪の世界をただ想像裡に描きつづけながら、こういう自分の雪に対するそれほど烈しくもない、といって一時の気まぐれでもない、長いあいだの思慕のようなものが、いつ、どうして自分のなかに生じて来たのだろうかと考え出していると、突然、十年ほどまえ八つが岳の麓にあるサナトリウムで生を養っていた自分のすがたが鮮かによみ返ってきだした。
冬になると、山麓のサナトリウムのあたりは毎日ただ生気なく曇っているだけなのに、山々はいつも雪雲で被われており、そんな雲のないときには、それらの山々は見事なほど真白なすがたをしていた。
僕はそんな冬の日をどうしようもなしに暮らしながら、ときどき雪の山のほうへ切ない目ざしを向けるようになり出していた。