……そんなことをきいてから、その石崖にかぎらず、この村のあちこちに残っている石崖のひとつひとつが、僕にはなんとなく意味ありげに思われて来てならなかった。
まあ、そういった鹿の跳び越えていった石垣だとか、秋になると蔦かずらが真紅になったまま捲きついている、何か悽惨な感じの、遊女らしい小さな墓だとか、――そういうものなら、そのほかにも、まだまだ何かありそうだね、これという話らしい話がそれに伴っていなくとも。
学生 三好さんの詩にも、何処かの山村を、一匹の傷ついた鹿が足を縛られたまま、猟師にかつがれてゆく詩がありますね。