――そんなに足場の悪い、貧弱な村も、その地震の直後は、避難民たちで一ぱいになり、そのひっそりした隅々まで引っくり返されたように見えたが、二週間たち、三週間たちしているうちに、それらの人々も、或るものは焼跡へ帰って行ったり、又、他のものは田舎の、それぞれに縁故のある村へ立ち退いて行ったりして、この村も、丁度コスモスの咲き出した頃には、漸くその本来のもの静かな性質を取り戻しつつあった。
私は父とその村に小さな家を借りて、しばらく落着いていることにしたのだが、その頃私はと言えば、何んとも言いようのない、可笑しな矛盾に苦しめられていた。
私は私の母を、その地震によって失ったばかりであった。