ときいてみると、「それはいずれ取壊そうと思っていますが……」と不二男さんは言って、その小屋には日向さんの爺やがしばらく仮住みしていたが、その前年の冬にそこで死んで行ったことを包まずに話した。
「ここの家、傷んでいるだけ位ならいいんだけれど、あんなものがあっては」……妻はそう私にそっと耳打ちしたが、それには私も同感だった。
若しかすると昔ちょいちょい見かけたことのあるその死んだ爺やの顔――目つきのこわい、因業そうな爺やの顔がふいとその瞬間鮮かに浮んで来ただけ、その閉された小屋は妻がそれをうす気味悪がった以上に、私自身の心に暗い影を与えているにちがいなかった。