「三枝さんはそれまでのいろいろの事情をよく御存じのお方でしたので、その婆さんのことも気の毒に思われて、『あなたはとうとう行っておしまいになるんですか。
もうすこしじっとしていらっしゃればいいのに……』といたわるように言われました。
「そう言われると、婆さんはつい日頃の愚痴が出て、いまさらのように日向家の仕打ちから、自分から見れば爺さんは呆れ返るほどのお人好しだのに、この村では誰一人にもそれが分からず、こんな折にも相談相手になって貰えるもののない事から、その挙句この村中の誰れかれの悪口を言い出すものですから、しまいには三枝さんの奥さんも持て余してしまって、いくらかのものを包んでやって早く帰らせようとしました。