八月の半ばも過ぎてから、爺さんは自分の甥とかのいる田舎へ鮎を食べに行こうと、奥さんとお嬢さんをしきりに誘っていました。
いまでは爺やの唯一の身よりのものらしいその甥に、自分の世話になっていた立派な奥さんたちを一目見せておきたかったのでしょう。
そこで或日、奥さん、お嬢さん、それに女中まで伴って、四人で汽車に乗り、小さな軽便に乗り換え、それからまた乗合に揺られて、その千曲川上流の或小さな町まで行き着いてみると、あいにくな事には川が荒れていて、鮎が一向に釣れず、その日はさんざんな目に逢って夕方帰っておいでになりました。