「爺やはこの頃は自分で建てた裏の掘立小屋に全く住みついてしまったようでした。
三枝さんのところを見まわる度に、よっぽどその裏の小屋へまわって声でも掛けてやろうかと思うのですが、私なぞが寄ってやったって何しに来たというような無愛想な顔しか見せない爺やのこと故、いつも何んだか気がすすまなくなって、またこんどにでもしようと思って途中から引っ返して来てしまうのが常でした。
「十二月になって、雪が二三度降り、いよいよ冬籠りをしだした時分になってから、うちの爺やがどうもこの頃うちを明けてばかりいるのに漸っと気がつき出しました。