「そうです」と不二男さんがそれを引きとって言った。
「あれは日向さんの別荘とその隣りにあった矢っ張紅殻塗りの古い外人別荘の二軒並んでいたのを買いとって、それを一つ敷地にしてあんなものを建てたのです。
ひと夏、その主というのが、若いお妾さんを連れて来ていましたが、その頃はまだ道ばたに立ち腐れになったまま、昔を知った人達になつかしがられていた例の水車を自分の家のなかへ移させたり、こちらの三枝さんの地所へまで目をつけて、それを欲しがって何度も周旋人を寄こしたりして、奥さんを大へんお慍らせになった事もありました。