これあ溜まらないと思って一しょう懸命に目をつぶっているうち、私は突然、おととし結婚するとすぐまだ夏になるかならないうちにこの村へ越して来てしまって、きょうその前を通ってみた、水源地に近いあの樅の木かげの山小屋で二人きりで暮らし出していた時分、よく夜なかにその夜鷹の啼き声をきいては互に気味悪がっていたことなぞを思い出した。
丁度、その小屋の裏がすぐ木立の深い谷になっていて、夜なかになると夜鷹がその谷から谷へと大きな環を描きながら飛びめぐっているらしいのが、その不気味な啼き声の或は遠のいたり或は近づいて来たりする具合で手にとるように私達には分かった。
けさ深沢さんと一緒にその山小屋を見てから更に奥の方へ下って行った谷がそれだ。