――そんな夜も露台に向いているドアや窓は医師の命令で細目に開けておく習慣だったので、それらの隙間からは無数の細かい雪が突風そのものと一しょに吹き込んできて、そこら中に手あたり次第に汚点をつけながら、彼の病室の中をくるくると舞っていた。
……彼はそっと眼だけを毛布のそとに出しながら夢心地にそれを見入っていたが、やがてそれらの活溌に運動している微粒子の群はただ一様に白色のものばかりでなく、それらのなかには赤だの青だの黄だの紫だのがまじっていて、それらが全体として虹色になって見えることに気がついた。
その瞬間、彼はちょっと軽い眩暈を感じはしたが、それでもなおその回転する虹に見入っていると、それがいつしか彼に子供の頃の或る記憶を喚び起させた。