この高原のどんな小径にでも勝手な名前をつけたがる西洋人に倣って、彼もこのへんの小径を自分勝手に Philosophen Weg と呼んでいたくらいだったのに。
……あの老夫婦もとうとう彼等の任期を了えて故国にでも帰ったのかしら。
――そう云えば、この老夫婦が他の亜米利加の宣教師たちと異って、いかにも趣味のいい、そして地味な暮し方をしていたらしいのは、彼等が彼等に代ってこの別荘に入るであろう人達のために残して行った幾つかの古びた家具類、――例えば大きな寝台とか、がっしりした食卓とか、稚拙な彫りのある椅子などを見れば分かる。