その時彼の額へ手をやっていたその細君らしい西洋婦人がひょいとうしろを振り向いたので、その方へやっと頭を持ち上げながら彼も見てみると、ホテルのポオチのところにドロシイとその妹は、丁度ホテルへ遊びにでも来ていたと見える彼女らの友達らしい五六人の少女たちに取りかこまれていた。
そうして一種の遊戯かなんぞをしているように、ドロシイの説明を聞こうとしていくつもの金髪を一とところに集めているそれらの少女たちの姿は、まだすこし頭の痺れている彼には、あたかも葡萄の房のようにゆらゆらと揺れながら見えた。
……ここにこうして居ると、そういう数年前の光景の一つ一つが、妙に生き生きと彼の心のなかに蘇ってくるのは、どういう訣かしらと考える度毎に、彼はこの樹蔭に何かしら一種特別な空気のあることに気づかないではなかったけれど、つい面倒くさいので彼はそれをそのままにしておいた。