弱気でしかも自我の強いために自分自身も不幸になり、他人をも不幸にさせたところのアドルフの運命は又、私の運命さながらに思えたからだ。
しかし、「アドルフ」の作者ほど、そういう弱々しい性格(恐らくそれは彼自身のであろうけれど)に対するはげしい憎悪も持っていない、むしろそういう自分自身を甘やかすことしか出来そうもない私がそんな小説の真似なんかしようものなら、それによって更にもう一層自分自身をも、又他人をも不幸にするばかりであることが、わかり過ぎるくらい私にはわかって来たのだ。
……こういうような考え方は、私の暗い半身にはすこし気に入らないようだったけれども、この頃のこんな田舎暮しのお蔭で、そう言った私の暗い半身は、もう一方の私の明るい半身に徐々に打負かされて行きつつあったのだ。