……数年前までは半分壊れかかった水車がごとごと音を立てながら廻っていた小さな流れのほとりには、その大抵が三四十年前に外人の建てたと言われる古いバンガロオが雑木林の間に立ちならんでいたが、そこいらの小径はそれが行きづまりなのか、通り抜けられるのか、ちょっと区別のつかないほど、ややっこしかったので、この村へ最初にやって来たばかりの時分には、私はひとりで散歩をする時などは本当にまごまごしてしまうのだった。
確かに抜け道らしいんだが、その小径は突然外人たちのお茶などを飲んでいるヴェランダのすぐ横を通ったりするのだった。
そういう私道なのか、抜け道なのか分からないような或る小径に又しても踏み込んでしまった私は、私の背ぐらいある灌木の茂みの間から不意に私の目の前が展けて、そこの突きあたりにヴェランダがあり、籐の寝椅子に一人の淡青色のハアフ・コオトを着て、ふっさりと髪を肩へ垂らした少女が物憂げに靠れかかっているのを認め、のみならず、その少女が私の足音を聞きつけてひょいと私の方を振り向いたらしいのを認めるが早いか、私は顔を赤らめながら、その少女をよく見ずに慌てて其処から引っ返してしまった。