そんな部屋の交渉は一切T君に任せたきり、そこの玄関口に無雑作にほうり出されてある埃まみれの本棚だの、錆びかかったタイプライタアだのへ目を注いでいた私は、やっと顔を持ち上げながら、どうせ私も二三日ぐらいしか泊らないつもりだからそれを見せて貰おうじゃないかとT君を促した。
T君がそれを主人に通訳してくれた。
さっきからT君の方をばかり見ていたその主人は、今度はそのおずおずしたような視線を私の方へ注いで、ではひとつその部屋を見てくれと言いながら、先きに立って、便所やらコック部屋やら浴室やらの前を通りぬけながら、ずっと奥まった部屋へ――そんな奇妙なところに二つばかり小さな部屋があるのだが、その一つのなかへ私たちを導き入れた。