私はとうとう須磨の方へ宿を替えることにした。
そうして私がこのホテルを立ち去ろうとする前に、最後に私の経験したいかにもこのホテルらしい異様なことは、一泊三円という約束だった宿泊料が四晩泊って十一円であったこと、それは何も特別に一円負けてくれたのではなしに、あの頭のすこし禿げかかったお人好しらしい主人が熱心に首をかしげて暗算した合計であったので、私は例の気まぐれから大いに愉快になり、すましてその通りに勘定を支払い、そしてそれだけ余分に私にはかなり無愛想だった支那人のボオイにチップを置いて来てやったことだった。
どうも気まぐれというものは多少メフィスティックなものであるらしい。