父は私を見ると、いつもにっこりして、金屑だらけになった膝の上に乗せてくれ、しばらくは父の押木の上に一ぱいに散らかっている鉄槌だの、鏨だの、鑢だのを私にいじらせてくれた。
が、それを好いことにして、私がだんだん父の膝を離れて、他の弟子たちの前まで出かけて行き、そこいらの押木の上に乱雑に積んであるものなどを手あたり次第にいじくり出していると、「こら、坊主……」とこんどは父に叱られて、すぐ私はその細工場から追い出されてしまうのだった。
が、その細工場じゅうに何処とはなしに漂っていた金屑のにおいなしには、もはや自分の幼時を思い出せない位、私はいつかそれ等のにおいを身につけてしまっていたのだった。