それを眺めているうちに、いつか自分の呼吸で白く曇り出している硝子に、字とも絵ともつかないような、それでいて充分に描き手を楽しませる模様を描いては、それを拭わずにそのままにして、又ほかの硝子戸にいって雨を眺めていた。
そんな硝子の模様は、あたかも私自身のいる温かい室内の幸福を証明しているかのように、いつまでも残り、それに反して、それ等を透かして見えている雨にびしょ濡れになった無花果の木をば、一層つめたく、気持わるそうに私に思わせていた。
その無花果の木は、漸っと大きく実らせた果を、私達に与える前に、すでに腐らせ出していた。