恐らく私は他の誰かに他の本を与えられたかも知れなかった。
それはそれでも好かったろう、――が、ともかくも、はじめて自分に与えられた一冊の絵双紙くらい、少年の心にとってなつかしいものはない。
――さて、私に与えられたその絵双紙というのは、その或一枚には、大雪のなかに、異様な服装をした大ぜいの義士たちが赤い門の前にむらがって、いまにも中へ討ち入ろうとしている絵が描かれてあった。
恐らく私は他の誰かに他の本を与えられたかも知れなかった。
それはそれでも好かったろう、――が、ともかくも、はじめて自分に与えられた一冊の絵双紙くらい、少年の心にとってなつかしいものはない。
――さて、私に与えられたその絵双紙というのは、その或一枚には、大雪のなかに、異様な服装をした大ぜいの義士たちが赤い門の前にむらがって、いまにも中へ討ち入ろうとしている絵が描かれてあった。