一時は軒下までも来た水ももうすっかり去ったが、そのあとの目もあてられない程にひどくなっていることを話し、何処かにしばらく一時借住いしなけれはならない家の相談などを母たちとし合ったりしていた。
幼い私は、父が来てそんな話をしていく度毎に、そんなわが家のことなどは思わず、唯、ながいこと可哀そうに水につかっていた無花果の木のことだの、どこかへ流れ去っただろう玉網のことだの、それから其処から引越してしまえば、もう会えなくなってしまうだろうお竜ちゃんのことだの、それから少し、たかちゃんのことだのを、切なく思い出していた。
芒の中