幼い私は、父が来てそんな話をしていく度毎に、そんなわが家のことなどは思わず、唯、ながいこと可哀そうに水につかっていた無花果の木のことだの、どこかへ流れ去っただろう玉網のことだの、それから其処から引越してしまえば、もう会えなくなってしまうだろうお竜ちゃんのことだの、それから少し、たかちゃんのことだのを、切なく思い出していた。
芒の中
「ほら、見てごらん」と父はその家の壁のなかほどについている水の痕を私達に示しながら、「ここいらはこの辺までしか水が来なかったのだよ。
幼い私は、父が来てそんな話をしていく度毎に、そんなわが家のことなどは思わず、唯、ながいこと可哀そうに水につかっていた無花果の木のことだの、どこかへ流れ去っただろう玉網のことだの、それから其処から引越してしまえば、もう会えなくなってしまうだろうお竜ちゃんのことだの、それから少し、たかちゃんのことだのを、切なく思い出していた。
芒の中
「ほら、見てごらん」と父はその家の壁のなかほどについている水の痕を私達に示しながら、「ここいらはこの辺までしか水が来なかったのだよ。