こちら側には低い生籬がめぐらされているだけだったので、自分より身丈の高い芒の中を掻き分けて、その溝の縁まで行くと、立木の多い、芝生や池などのある、美しいお屋敷のなかは殆ど手にとるように見えるのだった。
ときおりその一家の人達がその庭園の中に逍ったり、その花の世話をしたりしているのを見かけると、私の胸には何とも云いようのない寂しい気もちと、それから生ずる一種のとりとめのない憧憬の心とが湧いてきた。
そういう自分たちのいる世界とは全く別の世界があるという発見は、もう一つの物語の世界の発見と相俟って、他のいかなる大きな現実の出来事よりも、私の小さな人生の上にその影響を徐々に目立たせて行った。