夕方遅くなったりなんぞすると、母は吾妻橋の袂から俥をやとって、大川を渡って帰った。
そんなとき、私は母の膝の上に乗せられるのが好きだった。
母がまだ父と一緒にならないうちに、向島の土手下に私とおばあさんだけと暮らしていた時分、小さな煙草屋をやっていたと云う話を、私が誰からきくともなしに知り出していたのも、丁度その頃だった。
夕方遅くなったりなんぞすると、母は吾妻橋の袂から俥をやとって、大川を渡って帰った。
そんなとき、私は母の膝の上に乗せられるのが好きだった。
母がまだ父と一緒にならないうちに、向島の土手下に私とおばあさんだけと暮らしていた時分、小さな煙草屋をやっていたと云う話を、私が誰からきくともなしに知り出していたのも、丁度その頃だった。